
検討するツールが得られた。本方法は正攻法で疲労信頼性を求めるのが困難な現状でこれを発展させれば有力な手法になる。
3. 所与の構造に対する溶接作業の工数見積
節労を考慮して構造設計を行うとき、与えられた図面から必要な工作作業量を推定することは是非必要である。本研究では、特に割合の多い溶接作業について、溶接方法、溶接姿勢、作業環境が溶接時間に及ぼす影響を調査し、これらをあらわすパラメータを用いた溶接工数算出式を提案した。提案式は形状の異なったブロックに対しても一定の誤差範囲内の推定値を与え、実用に供することができる。今後はさらに多くのデータを用いて修正し、推定精度の向上を図りたい。
4. 座屈許容設計法
現行の規則では板部材は荷重が周辺支持で計算した座届荷重以下になるように設計することとなっているが、軽量化のためには弾性座届の発生を許容する設計が望まれる。しかし、座届を許容するにはそれに伴って生ずる有効幅の減少、繰り返し変形による疲労の発生その他について検討しておく必要がある。本研究では実船を対象としてこのような問題の検討を行った。その結果、2.5節に述べるように防撓材の効果の評価法、座届後の板の剛性計算法、複雑な船底構造における境界条件の考え方を始めとする多くの有効な結果が得られた。また、繰り返し座届する防撓板の疲労については、座届たわみによる曲げ応力が生じても少なくとも弾性である限りは、疲労亀裂は発生しないことが実験により確認された。これらの結果から、十分な注意を払えば弾性座届が生じても船体構造の性能は十分維持されるという結論を得た。
5. 波浪中の変動荷重による構造応答
波浪中の変動荷重は波の圧力によるもの、倉内流体の圧力によるものあるいは積荷の加速度による慣性力など種々あるが、いずれも船体運動の影響を受けるものであり、船体運動は波と船との相対的な大きさや方向によって変化するから、船の生涯の荷重分布を求めようとすると膨大な計算が必要となり、設計の利用できる範囲のものではない。そこで、水圧の応答関数から構造の応力の応答関数を求める方法を考案し、これをばら積貨物船の二重底とホッパとの結合ナックル部付近の応力に対して適用し、なお今後改善の余地はあるが、実用化の見通しを得た。
6. 計算による構造設計法
現在ではFEMを利用した計算結果を用いて構造設計が行われているが、必ずしも正しい結果が迅速に得られているとは限らない。そこで、日常設計に計算を取り入れるために必要な基礎技術を確立するために次の2項目の検討を行った。
ア) 計算の効率化
イ) 計算の手法の確立
計算の効率化に関しでは、ズーミング計算の省略と、スーパーエレメント法がある。疲労など局部の集中応力を論じる必要がある場合にはコースメッシュ(粗い要素分割)で計算を行い、その結果から問題個所を特定してそこを含む小部分をモデル化して、コースメッツュで得られた変形や応力を部分モデルの境界条件として再計算するのがズーミングであるが、このために必要な工数や時間が多いため簡単に利用できない状態である。そこで設計時に気軽に集中応力を算出するためにズーミング計算なしの推定法を検討した。後述するビルジホッパナックル部を例として検討し、一応の結果を出すことができた。今後さらに検討を進めれば実用になる手法の作成が可能と思われる。次に、スーパーエレメント法は、同一構造で複数の荷重ケースの計算をする場合や構造の一部分のみを変更した計算などを行うときに有効とされる方法で、実際の設計では望まれる方法である。これに関しても種々検討を行った。
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